水中の色と光が魚の視覚に与える影響:ルアー選択の科学
小川健太郎氏が主宰する「オガケン大学」の最新講義では、釣りにおけるルアーの色の選択という重要なテーマが深く掘り下げられました。今回の第3章「色と光のルアー学」の第2回では、「水深における色の消失順序」に焦点を当て、水が光をどのようにフィルターとして機能させるかについて詳細な解説が行われています。特に、人間の視覚と魚の視覚の違いが、水中でルアーがどのように見えるかに与える影響が強調されており、釣り人がルアーを選ぶ際の科学的根拠が提供されました。光の吸収や散乱がルアーの色にどのような変化をもたらすのか、そしてそれが魚にとってどのような意味を持つのかを理解することで、より効果的なルアー戦略を立てるための洞察が得られます。
この講義は、幼少期から米国で釣りを始め、大学での水産研究を通じて深い知識を培ってきた小川健太郎氏によって提供されています。彼は、2回にわたる365日連続釣行という並外れた経験も持ち合わせており、その知識と経験を基に、釣りの本質を魚の生態から解明しています。今回のテーマは「水深で消える色の順番 — 水は究極のフィルターである」であり、水中の光の挙動がルアーの視認性にどう影響するかを解説しました。
前回の講義では、人間と魚の視覚の違いについて学びました。人間が赤、緑、青の三原色で世界を認識するのに対し、多くの淡水魚や汽水魚は、これに加えて紫外線を認識する四原色視覚を持っていることが示されました。さらに、魚の目は光の変化への順応が遅く、朝夕はコントラスト、日中は色を重視するという特性も紹介されました。教授は前回の終わりに「赤いルアーを深い場所に投げたとき、本当に赤く見えているのか?」という問いを投げかけ、今回の講義でその答えを明らかにしました。
光と色の関係は、太陽光が全ての色のスペクトルを含み、物体はその一部を反射することで色として認識されるという前提に基づいています。水中に太陽光が差し込むと、水は光を吸収し始めますが、この吸収は色によって異なる深さで発生します。この「水が光を食べる」という現象は、虹の色の順番で進行し、最初に赤が吸収されます。純粋な水中では、赤い光はわずか数メートルで大幅に減衰し、10メートルも潜ると、人間の目にはほとんど赤が届かなくなります。深くなるにつれて、青や紫といった短い波長の光が残ります。このため、人間の目には深い場所にある赤いルアーは、赤としてではなく、暗いシルエット、つまり黒っぽく見えることになります。しかし、この「人間の目には」という前置きが非常に重要です。
なぜなら、魚の目は人間とは異なるからです。魚は紫外線側の光も認識でき、水中で最も透過しやすい460ナノメートル前後の青い光を中心に色覚が発達しています。これは、水中で最も利用できる光を最大限に活用するための進化の結果です。そのため、人間が深い場所で赤が見えないと感じても、魚は紫外線を利用したコントラストや他の色覚を通じて、何らかの形でルアーの存在感を感じ取っている可能性があります。この点はまだ完全に解明されていない領域であり、断定はできませんが、魚が人間が想像する以上に多くの情報を見ている可能性は十分にあります。
水深だけでなく、水の濁度もルアーの色の見え方に大きな影響を与えます。教授は「濁り=水深の圧縮」という概念を提示しました。例えば、水深3メートルの澄んだ水と、水深1メートルの濁った水では、光の吸収・散乱が同程度であれば、色の消失の仕方も似てきます。つまり、濁った水は、浅い場所であっても深い場所と同じような光の条件を作り出すのです。このため、濁りが強い日は赤い光がルアーに届きにくくなり、ルアーは赤を反射できず暗いシルエットになります。このような状況では、赤よりもピンクやチャート、あるいは全体的に光を反射する白のような、より視認性の高い色の方が魚に見つけてもらいやすくなる可能性があります。これは、雨上がりの濁った水でいつもの赤いルアーが効かず、ピンクに変えたら釣れたという釣り人の経験とも一致します。しかし、これもあくまで人間の目からの推測であり、魚の実際の見え方は異なる可能性があることを、この講義は繰り返し強調しています。したがって、これらの知識は絶対的な法則ではなく、「傾向」として捉え、ルアー選びの参考とすべきです。