ネパールのハイキング文化:カトマンズ近郊、3000m超の「丘」サイルンを巡る旅
ネパールに移住した日本人学生が、カトマンズ近郊で新たなハイキング文化が花開いている様子を報告しています。ヒマラヤの雄大な山々が知られるネパールですが、近年、若者たちの間で人気を集めているのは、もっと身近な丘や森でのハイキングです。特にコロナ禍によるロックダウンを経て、自然を求める人々の間でこの傾向が強まりました。手軽に参加できるハイキングイベントが毎週のように開催され、交流の場や運動の機会、さらにはSNS映えする絶好のロケーションとして、多くの若者を惹きつけています。このレポートでは、標高3,000mを超える「丘」サイルンを例に、日本とは異なるネパール独自のハイキングの魅力を紹介しています。
カトマンズ近郊に広がる新たなハイキングブーム:コロナ禍が育んだ自然との触れ合い
約半年前、ネパールの首都カトマンズへ移り住み、学生生活を送る筆者は、学業の合間を縫って近郊でのハイキングを満喫しています。ネパールと聞けば、多くの人々はエベレストやアンナプルナといったヒマラヤの高峰を連想することでしょう。しかし、今日、現地の若者たちの間で熱い支持を得ているのは、彼らの生活圏に寄り添う、より手軽なハイキングなのです。
このハイキングブームの火付け役となったのは、奇しくも新型コロナウイルス感染症でした。長期にわたるロックダウンによって、人々は自宅に閉じ込められる生活を余儀なくされました。その反動として、行動制限が解除された後、彼らが求めたのは都市の喧騒から少し離れた丘陵地や森林といった自然豊かな環境でした。もともと娯楽の選択肢が限られていたネパールにおいて、ハイキングは瞬く間に身近なレジャーとして定着していったのです。筆者が暮らすカトマンズでは、週末ごとに多様なハイキングイベントが企画され、多くの人々が連れ立って近郊の自然へと足を運びます。参加費用は手頃で、一人でも安心して参加できるため、新しい友人との出会いや健康増進の機会となり、さらにはソーシャルメディア、特に人気の高いTikTokの投稿ネタとしても最適です。雄大な自然を背景にした動画は、瞬く間に拡散され、若者たちの間で週末ハイキングへの関心を一層高めています。
今回筆者が探訪したのは、カトマンズから東へバスで約5時間の距離に位置するサイルン(Sailung)です。カトマンズ盆地は日本の古都・京都のように四方を山々に囲まれ、筆者の自宅からわずか3kmも歩けば標高2,000m近い地点に到達できるほど、都市と自然が密接しています。しかし今回は、市街地を離れ、その外側に広がる新たな景観を求めてサイルンへと向かいました。「5時間」という移動時間は遠く感じられるかもしれませんが、距離にして約120km。これは日本で例えるならば、東京から富士山へ向かうような感覚に近く、ネパールの劣悪な道路事情を考慮すると、現地の人々にとっては十分に「近場」のハイキングエリアなのです。サイルンという地名は、タマン族の言葉で「100の丘」を意味し、その名の通り、なだらかな丘陵が幾重にも連なる壮大な景色が広がっています。この地の写真を目にした瞬間から、筆者は「この場所を自分の足で歩いてみたい」という強い願望を抱いていました。
このネパールのハイキングブームは、現代社会における人々の自然回帰への強い願望を象徴していると言えるでしょう。デジタルデバイスに囲まれた日常から離れ、雄大な自然の中で心身をリフレッシュし、友人との絆を深める。そして、その体験をソーシャルメディアで共有することで、さらに多くの人々を巻き込んでいく。これは、単なるレジャーの流行に留まらず、新たなライフスタイルとしての価値観を提示しているように感じられます。特に、経済的な負担が少なく、誰もが気軽に楽しめるという点が、この活動の持続性と普及を後押ししているのではないでしょうか。私たちも、身近な自然に目を向け、日常の中に冒険を見出すことの大切さを、このネパールからのレポートから学ぶことができます。