戦国時代の息吹を感じる群馬の低山、岩櫃山と嵩山を巡る
冬から春にかけての時期は、積雪や厳しい寒さのリスクが少なく、低山登山に最適なシーズンです。さらに、ヤマビルの活動も落ち着くため、安心して自然を満喫できるでしょう。今回は、歴史的な背景を持つ群馬県の二つの低山、岩櫃山と嵩山をご紹介します。これらの山は、その頂上や途中の見晴らしの良い場所から、澄み切った空と広大な景色を堪能でき、これからの季節に特におすすめの登山スポットです。
戦国の歴史が息づく岩櫃山と嵩山
群馬県に位置する岩櫃山(標高803m)と嵩山(標高789m)は、単なる自然の景観だけでなく、戦国時代の重要な舞台となりました。永禄6年(1563年)、武田軍の真田氏が上杉軍の斉藤氏が守る岩櫃城を攻略したことから、この地域の歴史が動きます。城を追われた斉藤氏の末子・城虎丸は嵩山城に入り、岩櫃城の奪還を虎視眈々と狙いました。永禄8年(1565年)には、上杉氏の援軍を得た城虎丸の兄・憲宗が嵩山城に到着し、岩櫃城への攻撃を開始。多くの低山が選ばれる日本百低山にも数えられるこれらの山々で繰り広げられた激しい戦いは、まさに歴史の転換点でした。
岩櫃山は、東吾妻町にそびえる険しい岩峰で、「ぐんま百名山」にも選定されています。主要な登山口は平沢、赤岩、密岩の三つがありますが、多くの登山者が利用するのは平沢登山口です。ここからは、かつて真田氏の居城であった岩櫃城の本丸跡を経由して山頂を目指します。広々とした駐車場が完備されており、車でのアクセスも非常に便利です。筆者も平沢登山口から出発し、岩櫃城本丸跡を訪れました。
平沢登山口から森林の中を約20分歩くと、岩櫃城の本丸跡に到着します。戦国武将の中でも特に人気が高い真田氏ゆかりの地とあって、訪れる観光客の姿が絶えません。11月下旬になると、木々の葉が落ち、視界が開けて嵩山方面をはっきりと見渡すことができます。山城愛好家にとって、冬は遺構の形状が分かりやすくなるため、まさにハイシーズンです。この場所から嵩山を眺めながら、「かつての武将たちもここから嵩山を警戒していたのだろうか」と、歴史の情景に思いを馳せました。
本丸跡を過ぎて岩櫃山の山頂へと進むにつれて、道は次第に岩場が増えていきます。6合目からは、巨大な岩の間を縫うように登るルートとなり、ここを攻めることの困難さが肌で感じられます。本丸跡から約40分で山頂手前の絶景スポットに到達。ここには特定の名称はありませんが、360度のパノラマビューが広がる場所です。ここから山頂を望むと、岩の頂に翻る旗と、それに続く鎖場が目に入ります。もしこの先のルートに不安を感じる場合は、ここで景色を存分に楽しみ、引き返すのも賢明な選択です。山頂への最終アプローチには、高さ約10mの壁のような鎖場があり、混雑時には渋滞することもあります。無理をせず、安全な登山を心がけましょう。
岩櫃山と嵩山への登山は、単に体を動かすだけでなく、日本の歴史に深く触れる貴重な体験を提供してくれます。澄みわたる空気の中で、いにしえの戦国の世に思いを馳せながら山頂を目指す旅は、日常の喧騒を忘れさせてくれることでしょう。特にこれからの季節は、景色の美しさと気候の穏やかさから、多くの人々に感動を与えてくれるはずです。登山計画を立てる際には、史跡巡りの要素も加えることで、より一層充実した時間を過ごせるでしょう。