信濃路の秘宝:中山道鳥居峠のグラベルロード探訪
古の道を駆け抜け、新たな感動を掴む
中山道サイクリングの魅力と「鳥居峠」の発見
自転車での移動は日常的な楽しみの一つですが、車の往来が多い道路では、時にストレスを感じることも少なくありません。幹線道路の端は荒れていることが多く、自転車と車が互いに気を使いながら走行する状況は、決して理想的とは言えません。そんな中、サイクリングに適した道を探し求める日々を送る中で、旧中山道に位置する「鳥居峠」の存在に心が惹かれました。この峠は、全国に同名の地が点在することから、その歴史的な重要性が伺えます。ハイキングコースとして整備された自然歩道に加え、明治時代に開通した旧国道も未だ通行可能であり、特に未舗装の砂利道が続くという情報に、胸が高鳴りました。今回の旅の相棒は「グラベルバイク」。ロードバイクの軽快さとマウンテンバイクの走破性を兼ね備え、舗装路から未舗装路まで、あらゆる地形を快適に走破できるこの自転車は、鳥居峠のような場所でその真価を発揮します。
中山道鳥居峠:歴史と自然が織りなす極上のグラベル体験
今回のサイクリングは、中山道の中でも特に風情ある奈良井宿を起点とし、鳥居峠を越えて薮原宿を目指すコースでした。現在では国道19号線の「(新)鳥居トンネル」を通るのが一般的ですが、私たちは歴史を感じる旧道、特に明治時代に開通した「明治新道」を選びました。旧中山道には「信濃路自然歩道」もありますが、自転車での走行は困難なため、より開けた明治新道を辿ることに。8月下旬の奈良井宿は、昼前でも30℃の気温でしたが、乾燥した空気のおかげで不快な暑さは感じられませんでした。賑やかな宿場町を後にし、緩やかな上り坂を登っていくと、道は次第に広がり、美しい植林地の中へと入っていきます。ここから道は砂利道、すなわちグラベルロードへと変わります。標高1,100mを超えると、国道を走る車の音は遠ざかり、静寂が訪れます。聞こえてくるのは木々の葉擦れの音と、微かな小川のせせらぎのみ。細かく敷き詰められた砂利道は非常に快適で、緩やかな傾斜(約4〜5%)が続くため、一定のリズムでペダルを回し続けることができました。途中、馬頭観音を過ぎると歩道に合流し、「峰の茶屋」があります。水場は枯れていましたが、ここで一休み。いよいよ鳥居峠の「大分水嶺」へと差し掛かります。一見すると平坦な道に見えますが、ここが日本海へ注ぐ信濃川水系と、太平洋へ向かう木曽川水系の分かれ目。釣り好きにとっては、ヤマメとアマゴの生息域を分ける境としても、感慨深い場所です。この先には、鳥居峠の名の由来となったとされる石の鳥居や御嶽神社、丸山公園がありますが、今回は自転車での走行を優先し、これらの散策は見送りました。歩道と別れ、峠を南西へと進むと、道はさらに快適になります。細かな砂利は枯れた松葉で覆われ、まるで絨毯の上を走っているかのよう。緩やかなバンクのカーブが続き、森の中を軽やかに駆け抜ける感覚は、まさに至福の時でした。しかし、ここは一般車両も通行する車道であることを忘れず、スピードを抑え、常に周囲に注意を払う必要があります。実際に遭遇したのは軽トラック一台のみでしたが、時にはカモシカが姿を現し、しばらく一緒に走るという貴重な体験もありました。また、海外からのハイカーらしき人々も数組見かけ、彼らもまた、この歴史ある道を遠回りして楽しんでいるようでした。